フナイシの映画なぐりがき。

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「シン・ゴジラ」 圧倒的な絶望感、でも勇気が貰える映画 。 ネタバレ感想



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シン・ゴジラ(2016)  


オススメ度 S (どんな人にも観て欲しい!)


〜鑑賞前の心境〜

僕にとってゴジラは小さい頃から側にいたような存在であり映画を観て楽しむこと、笑うこと、悲しむこと、考えること・・・今の自分に無くてはならない色んな事を教わった気がします。だからこそハリウッド版の二作も含めて、全てのゴジラがかけがえのない作品です。特に2014年の「 GODZILLA ゴジラ 」は、最新のVFXで表現されたゴジラと怪獣プロレス、そしてゴジラシリーズにたまにある脚本の荒さ (殴)まで全てが愛おしく、童心に帰らせてくれた大事な一本になりました。その2014年版に対抗する様に、今年満を持して公開される事になった12年ぶりの日本版ゴジラであるシン・ゴジラ。自分にとって庵野秀明さんの作品は良い時と悪い時の差が激しい印象があり、どうなるか全く検討もつかない状態。その為鑑賞する当日ですら期待と不安に押し潰されそうになりながら席に着き、映画が始まるのを待ちました。













〜鑑賞後の心境〜 


個人的評価      98点


☆良かったところ


ゴジラゴジラへの愛に溢れた演出に感動!


鑑賞前にあった不安は映画が始まるとすぐに吹き飛びました。現在の東宝ロゴが出た後に、わざわざ旧東宝ロゴと大きな足音、初代ゴジラのオープニングがカラーで再現され「これは凄い映画になるぞ。」と緊張が別の物になりました!


そして今回のゴジラ、段階的に進化するという斬新なものでとても面白かったです! 

特に好きなのは第二形態から第三形態に進化するシーン。ゴジラとは似ても似つかない第二形態(お目目クリクリで可愛いw)が伊福部さんの初代ゴジラのテーマに合わせてゴジラらしい姿の第三形態に進化するという嬉しい演出なんですが、当時の古い音源のまま初代ゴジラのテーマが流れるので、

音質の悪い音楽と画質の良い映像が同じ劇場に流れることによって生み出される独特の異様さと不気味さがゴジラをより恐ろしく見せていた気がします。


ゴジラが初めて放射熱線をお披露目するシーンも素晴らしく、顎が二股に割れれたり、目にレンズが降りてきたり、煙→炎→ビームと変化する熱線、vsシリーズの体内放射をアレンジしたような背びれからの一斉射撃など絵ズラ自体は笑っちゃうくらい派手ですが直接人が死に至る描写は少ないのです。その部分も含めて庵野さんに縁のある巨神兵の火の七日間と同様の「象徴化された恐ろしさや絶望感」が今回のゴジラに感じられ、初代ゴジラが新たな姿で蘇った様な気がして感極まったのか、恐ろしかったのか涙が溢れていました。


また今回はゴジラが誕生した理由もかなり好きです。ゴジラをよく「人間の愚かさが生み出した哀しい存在」と例える方が多く、自分もこの考え方が好きです。しかし僕は今までの和製ゴジラには「人間というよりアメリカの愚かさが理由で生まれたものが、日本を脅かす」という側面を強く感じてきました。実際ハリウッド版ゴジラでは2作品ともゴジラ誕生の原因がアメリカに無かったことに不満のを言う人が多かったことからも、自分と同じ印象を持っている方は少なくないと思います。

ですが今回のシン・ゴジラでは特定の国に原因は無く、各国の人々が秘密裏に捨てた放射性廃棄物が原因でゴジラが誕生したとされていたため最初に述べた「人間の愚かさが生み出した哀しい存在」という側面が純化されていると思い、ゴジラがより普遍的な問題提起をしていると感じたため個人的にとても嬉しかったです。そのうえ今回も核由来の怪獣であり、放射能をまき散らしていることも明確にされていて、「核の申し子」というゴジラが持つ反核のテーマは変わらずに訴え続けているのもいいと思いました。



②登場する人々の描写が素晴らしかった!

実は以外とゴジラ自体よりもこの部分が気に入っているかもしれません。シン・ゴジラでは現代日本が抱える問題や不満が赤裸々に描写されているのです。ゴジラに対する政府の初期対応のずさんさは震災や原発の問題を連想させますし、特にアメリカに対してのオブラートに包まない文句(事あるごとに「かの国は〜」と言うのには笑ったし、「戦後日本はアメリカの属国だ」という台詞にはドキッとした汗)にはここまで言っちゃうんだとビックリしましたが、そういった真実や本音を逃げずに言う姿勢がゴジラという現実離れした存在の登場にも説得力やリアリティを持たせ続けていると思いました。

ただ、この映画の更にいいところは現代社会に対して文句や批判をするだけで終わらないことです。例えばアメリカ批判は確かに多かったですが、日本の為に協力を志願するアメリカ兵が沢山いたり、大使館にいたアメリカ人が日本の人々の事を尊重している様子も映されていました。他にも「総理って大変だね。ラーメン伸びちゃったよ〜」と人によっては怒りかねない(僕は可愛いと思いましたがw)発言をしていた臨時総理も深々と頭を下げて日本の為に尽くしていた事が最後にわかったりして、結果として誰一人として全否定はされていないのです。またスパコンによる日本への協力を快く受け入れるドイツの女性の方、自分も大変だろうに働いている人達の為にすすんでお茶や軽食を持ってきてくれるおばちゃん、そんな色んな場所での人々の優しさが描かれることによって、「人間っていいところばかりじゃ無いかもしれないけど、決して捨てたもんじゃない」と、どこかポジティブな気持ちにさせてくれるのです!そのおかげか二回目の鑑賞では一回目の時には少しイラっとしたような人物に対しても違う見方が出来る様になっていて自分にとって貴重な体験になりました。


そしてもう一つ人々の描写のいいところとして、全ての働く日本人が輝いて見えるような作りになっているところです。この映画には沢山の職業の方が出てきて全員が打倒ゴジラに向けて頑張るのですが、その為に何か特別な事をする人間はいないんです。例えば政治家がすることはあくまで政治活動だし、警察は交通整理、自衛隊は危険な場所へ赴き、消防士は人々を避難させ、科学者は研究に打ち込み、そして優しいおばちゃんはお茶を出す (しつこい笑) 。これらは単にゴジラが関わっているだけで日々その人が行っている仕事内容と殆ど変わりません。初代ゴジラは天才的な科学者が自らの命と引き換えに国を守るという美談でしたが、今回のシン・ゴジラ現代社会に生きる全ての人々が普段の仕事ぶりをゴジラにぶつけて日本を救うのですです!その為この映画自体が社会で働く全ての日本人へのエールになっていると思うのです。國村隼さん演じる自衛官が「仕事ですから。」のセリフからも日本人の良さと仕事を行う人々へのリスペクトの両方を感じました。

そして全ての戦いが終わった後、赤坂の「スクラップアンドビルドで日本はここまでやってきた」というセリフと直後に流れる避難所で笑顔を見せる子供の姿による連続コンボで、まさかシン・ゴジラがこんなにも日本の未来に希望が持てる映画とは思っていなかったので正直泣きそうでした。しかし感動によって緩んだ気持ちを矢口の最後の台詞と人間の業を暗示するようなゴジラ尻尾が映るラスト(初見では「動くのか!?」とおもいましたw)に気を引き締められるので、とてもいい終わり方だったと思います。


★不満だったところ


石原さとみが日本人にしか見えないところです(笑)。あのハイテンションなキャラ自体は好きなのですが、二つの国の間で揺れ動くというのがこの人のもう一つの魅力である筈なのに、どう見ても日本人な石原さとみによって全然揺れ動いてる感が出てない気がしました。もっと日本人離れした容姿の方が同じ役を演じていれば人種を超えて日本に協力してくれる様子に絵的な説得力を持たせてくれるのではないかと思いました。



まとめ

少しだけ文句は言っちゃったものの、本当に日本で生きる全ての人々への応援歌の様な映画でした。ゴジラではなく最後まで人間を応援したのはこれが初めてかもしれません。2016年はいい邦画がどんどん出て来ている気がします。この波に乗ってシン・ゴジラが日本だけでなく日本映画にも希望をもたらしてくれる事を願ってます!シン・ゴジラ本当にありがとう‼︎


今週のお題「映画の夏」